とても刺激的な一冊。
なぜビジョナリーには未来が見えるのか? 成功者たちの思考法を脳科学で解き明かす
エリック・カロニウス 花塚 恵
サブタイトルにあるように、この本では、ヴァージンのリチャード・ブランソンやアップルのスティーブ・ジョブズ、ディズニーのウォルト・ディズニーといった「ビジョナリー」として知られている人々を取り上げ、なぜ彼らがビジョナリーなのかを脳科学の観点から解き明かそうとするもの。
ビジョナリーに共通している要素として、
- 発見力 − 見過ごされているものを見いだす
- 想像力 − 頭の中で視覚化する
- 直観 − 「無意識」の声に耳を傾ける
- 勇気と信念 − 犠牲を厭わず、人生を賭ける
- 共有力 − 自分のビジョンに他人を巻き込む
- 運 − 偶然を自分のものにする
などを取り上げ、それぞれ一章を費やして解説している。さらに「ビジョンを曇らせるもの」や「「ビジョナリー気取り」の誤算」などの観点も取り上げている。
そして、こういう要素の解説をするのに各氏の自伝だけではなく、『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』や『デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳』、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』、『ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理』、『心の仕組み~人間関係にどう関わるか』など、あらゆる文献を引用しながらビジョナリーの本質に迫ろうとしている、読んでいて知的興奮を味わえる一冊。参考文献は、この手の分野に入っていくための良い文献リストになっている。
では、この本を読んだら自分も明日から「次のジョブズ」と呼ばれるようなビジョナリーになれるのかというと、全然そんなことないところが、また面白い。
タイトルや目次から期待されるような、最近のビジネス書に出てくるようなハウツーっぽいまとめ(「ビジョナリーになるための10の行動」みたいなリストとか)は一切ない。
例えば、最終章「ビジョンを習得することは可能か?」の中で、「運」について次のように書いてある箇所があるが、
ブランソンがロンドンにヴァージン・レコード・ストアを初めてオープンさせたとき、いずれ宇宙船ビジネスに関わることになるとは思ってもいなかった。彼はひたすら全力で走りながら、必要に応じてプランに修正を加えただけだ。(中略)ウォルト・ディズニーも、テーマパークはおろか、長編のアニメーション映画を自身の手でつくることになるとは夢にも思わなかった。実際ウォルトは、「私がどの程度の展望を抱いていたか、正直に言おう。実は1930年になっても、イソップ物語のアニメーションシリーズ並みのものが作れればいいと考えていた」と述べている。彼らのようなビジョナリーは、ボールを追う野手と同じで、ひたすら前に向かって走りながら目標を調整しているのだ。
これなんかは『小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密』の内容とかぶるところがある。
要はビジョナリーになりたければ、安易に答えをほしがるなというオチかな。
年末年始に自分の頭に栄養を送りたい人には良い一冊かも。
なぜビジョナリーには未来が見えるのか? 成功者たちの思考法を脳科学で解き明かす
エリック・カロニウス 花塚 恵
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